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診断未確定関節炎に対する新潟発地域連携システム

その症状、 関節リウマチ ではありませんか?

関節リウマチは早期診断、早期治療が大切です。また、生涯にわたる治療とケアが必要です。

こちらで関節リウマチのチェックができます!

自己チェック

No.1
30分以上持続する朝のこわばり

関節リウマチとは

関節の構造

関節とは、骨と骨のつなぎ目です。
骨のつなぎ目の部分にはクッションの役割を果たしている軟骨があります。
関節は滑膜(図の青色部)に包まれており、滑膜の中には潤滑油の役割を果たしている関節液が入っています。
関節液は滑液ともいいます。
滑膜は薄い膜でできており、関節組織を内側からくるんでいます。また、関節液を生成したり、関節液を通じて軟骨に栄養を与える機能があります。

この滑膜と滑液が関節の滑りをよくすることで骨と骨がぶつからないようになっています。

関節リウマチの正体は滑膜炎

関節リウマチは滑膜が炎症を起こしている状態であり、関節リウマチの正体は滑膜炎ということになります。
症状が滑膜に限られている間に適切な治療を受けることができれば、軟骨や骨に対するダメージを防ぐことができます。

症状が進行すると・・・

関節リウマチの症状が進行すると、滑膜組織から炎症性サイトカイン中性プロテアーゼ活性酸素一酸化窒素といった炎症を悪化させる物質が次々と分泌されてしまいます。このうち、中性プロアテーゼは軟骨にダメージを与えることがわかっています。
骨の場合、通常であれば骨芽細胞という骨を作る細胞と破骨細胞という骨を破壊する細胞の両方のバランスが取れているので骨が壊れることはありません。
しかし、関節リウマチになると滑膜組織から生成される炎症性サイトカインが原因で破骨細胞が活性化し、骨芽細胞の力を上回ってしまうため骨にダメージを与えてしまいます。

関節リウマチになりやすい人の特徴

日本人の関節リウマチ発症率は1%前後といわれています。
性別でみると、人口1000人に対して女性が5.4人で、男性が1.1人と報告されており、関節リウマチは女性に発症しやすい病気であることがわかります。
また、関節リウマチが発症しやすい年齢は30~60歳が最も多くなっています。
関節リウマチは一般的には、それほど強い遺伝性はありません。
その他にも、出産をきっかけに発症することもあります。
また、怪我や精神的なストレスがきっかけになることもあります。

3つの発症タイプ

関節リウマチは症状によって大きく3つに分類されます。

4つの経過タイプ

リウマチの経過も人によって様々あり、大きく4つに分類されます。

※これらのタイプは関節リウマチを発症したときに予め決まっているものではなく、治療の良し悪しによって変化します。
※悪性関節リウマチは、血管炎や肺線維症を合併するリウマチを指しており、リウマチの経過を意味するものではありません。

よくある質問

手指の朝のこわばりが1か月続いた場合、どうしたらよいでしょうか?

指の第2関節と第3関節、そして手首の関節が腫れているでしょうか? 
関節リウマチの診断基準では6週間以上関節の症状が持続する場合とされています。
もう2週間経過をみて軽快しないようならば、近隣の整形外科およびリウマチ内科クリニックを受診して検査を受けてください。

足の指や足首がこわばったり、腫れたりしています。特にどこかにぶつけたり、ひねったりしたことはありません。リウマチでしょうか?

足の指の付け根の関節に痛みを生じたり腫れている場合、さらに左右両方に症状がある場合は関節リウマチの可能性があります
ほかの疾患としては、高尿酸血症による痛風の症状、ピロリン酸カルシウム結晶による関節炎の症状(偽痛風)、細菌性の感染症(蜂窩織炎や爪周囲炎に伴う痛みと腫れ)の場合もあります。
足関節が単独で腫れている場合で持続する場合は関節リウマチの可能性があります。
骨の出っ張りに沿った痛みの場合は、腱の付着部炎症の可能性があり、この場合は脊椎関節炎(腰痛も伴う炎症性関節炎)、皮膚疾患に伴う関節炎(乾癬や掌蹠膿疱症性骨関節炎)の可能性もあります。
ご心配であれば、まずは近隣の整形外科を受診していただくことをお勧めします。

治療が遅れるとどうなりますか?

治療が遅れる、すなわち関節リウマチの関節の腫れと痛みが持続すると、関節破壊が生じることになります。
一過性に(ひとりでに)よくなる場合(診断的には回帰性リウマチと呼ばれます)もありますが、もし1か月から1か月半以上同じ部位に関節の腫れが持続する場合は、近隣のリウマチクリニックや整形外科クリニックでご相談くださり、血液検査をしてもらうことをお勧めいたします。

診断未確定関節炎の問題点

診断未確定関節炎とは、関節炎の症状が出現して検査をしても確定診断できない関節炎のことです。

診断未確定関節炎

Undiagnosed Rheumatic Disease:URD

一般的な臨床検査と身体診察では確定診断に至らない関節炎です。
RF、抗CCP抗体いずれも陰性がしばしばで、診断基準を満たしません。

Preclinical RA (Mankia K, et al. A&R, 2016)

 診断未確定リウマチ性疾患の中で将来的に関節リウマチになる症例です。
主な要因は遺伝、環境(喫煙、歯周病)、無症候性の抗CCP抗体陽性、腸内細菌の破綻などとされています。

診断の遅れのもととなる3つのdelay(遅れ)

Patient delay

症状発現からプライマリドクター(かかりつけ医師)を受診するまでの期間

General Practitioner delay

プライマリドクター(かかりつけ医師)からリウマチ医に受診するまでの期間

Rheumatologist delay

リウマチ医受診から抗リウマチ薬治療が開始されるまでの期間

(Bykerk V, et al. AR, 2010)

早期関節炎症例で関節リウマチと診断された人々のうち、リウマチ医に受診した期間が12週間未満と12週間以上の方を比べたところ、12週間未満のうちにリウマチ医に受診された方々の方が病変進行の程度や症状が落ち着いて安定する確率が優れていました
症状が現れたらプライマリドクター(かかりつけ医師)に早期受診することが大切です。

(van der Linden MPM, et al. Arthritis Rheumatol, 61: 3537-3546, 2010)

治療の目標(2020診療ガイドライン)
実際どのような症例が紹介されてくるか?(過去2年の統計)

治療の目標とゴール

関節リウマチ治療の現場では、「寛解の達成と維持」だけでなく、痛み・倦怠感・こわばりといった主観的症状を改善し「よりよい毎日を過ごす」ことも目標に加えるべきだという考え方が広がりはじめています。

新しい治療の考え方

関節リウマチ治療の現在とこれから

関節リウマチ治療の重要な目標のひとつは、「寛解の達成と維持」です。寛解とは、炎症がほぼ消失し、関節破壊の進行がおさえられ、身体機能の低下がない状態をいいます。現在の治療では、関節リウマチ治療の基本的な考え方である「目標達成に向けた治療(T2T:Treat to Targetの略)」のもと、この「寛解の達成と維持」を目指します。

そして最近は、「患者報告アウトカム(PRO:Patient Reported Outcomeの略)」という指標も、治療に取り入れられるようになってきました。「寛解の達成と維持」だけでなく、患者さんが感じる症状の度合いや生活のしやすさなども重視していこうという流れが広まっています。

参考

過去 2年間の紹介患者(新潟大学医歯学総合病院整形外科外来)

関節リウマチ      70%

関節リウマチ以外の診断 30%
  膠原病、変形性関節症、良性腫瘍、皮膚疾患に伴う関節炎

”Collaboration

の頭文字をとったものです。

つまり…

”診断未確定リウマチ性疾患に対する新潟発地域連携ネットワーク”

の略です。

これまで新潟県内では、一部のクリニックとリウマチ疾患を扱う専門医療機関の間でリウマチ性疾患の病診連携、病病連携が行われてきました。しかし、診断未確定リウマチ性疾患については連携の仕組みが構築されておらず、早期診断という点からは必ずしもうまくいっているとは限りませんでした。

そこで2022年6月に日本リウマチ学会の公募グラントに応募し本件が採択されました。

この連携ネットワークは二つの柱からなります。

一つ目の柱は、リウマチ性疾患を疑わしいと思う方を対象にした関節リウマチ早期診断のための自己診断チェック表と近隣の医療機関の案内一覧です。

二つ目の柱は、医療従事者向けで、クリニックの先生、整形外科や内科でリウマチ性疾患をご担当されている先生を対象としております。診断や治療に難渋する場合、当サイトにアクセスしていただき、質問をしていただきます。ご回答に同意をいただいた新潟県内のリウマチ専門医がその質問に回答していくシステムです。

どうぞご活用いただければ幸いに存じます。

2023年4月吉日
診断未確定リウマチ性疾患に対する新潟発地域連携ネットワーク(CoNN-URD)
代表医師 近藤 直樹
新潟大学医歯学総合病院整形外科 病院准教授
日本リウマチ学会指導医 専門医
日本整形外科学会専門医
日本骨粗鬆症学会認定医

※このサイトはファイザー株式会社様の医学助成金にて作成いたしました。